越前市の中でも古くからの市街地である「越前武生」での木工の歴史は長く、その始まりは江戸末期から明治初期にかけてといわれている。
能面作りなどの工芸的な仕事をしていた者、農業を生業としながら手先が器用だった者などが、お膳風呂や板戸などを作り、これが専業化されていったという。
その後、指物師(さしものし)として旦那衆の家に出入りするようになり、高価な箪笥や建具などの製作を手がけるようになる。文化水準が高く、経済的にも恵まれていた当時の武生。旦那衆から絶えず高度なものが求められたことで技術が発達していった。その技術は現在に受け継がれ、越前指物が今なお高い評価を受けている理由はここにある。
指物とは、釘を使わずに木の板と板を組み、指し合わせる仕事のこと。また、その技法を使って作られた箪笥や調度品、建具などの製品を意味する。
越前武生のまちなかにある古い通りの一つ「タンス町通り」(最上段写真)。この通りには、かつて指物職人たちの工房が集まっていた。今でも家具店や工房が軒を連ね、趣のある古い町並みが残っている。
タンス町通りにある「越前箪笥会館」。越前箪笥の情報発信の拠点として、各工房が作る箪笥や指物製品を展示。製品の販売のほか、木工体験なども開催する。
福井県越前市本町1-19
(カーナビ等を使う際は「越前市本町1-20」で検索)
11:00~16:00/水・木曜休館/入館無料
使う材料は主にケヤキやキリなどの無垢材。釘を一本も使うことなく、伝統の指物技術で組まれている。漆の仕上げには越前漆器の技、箪笥の角を保護する金具には越前打刃物の技も用いられている。車輪がついているものもあるが、これは火事の際にすぐに持ち出せるようにするため。近年は伝統的なものだけでなく、現代の住宅に合ったデザインの越前箪笥も作られている。
江戸末期から明治初期に、旦那衆の家に出入りしていた指物師が始めたとされる。高い職人の技術と木材の特性を活かし、組子らんまや建具などの装飾に用いられている。小さな部材のパターンを組み合わせて描く、さまざまな幾何学模様が美しい。
キリが箪笥の素材に使われるのは、軽くて狂いが少なく、耐火性があり、湿気を寄せ付けないため。「うづくり」「ろうみがき」といった伝統的な技法で木目を浮かび上がらせるなど、キリの特性を活かした仕上がりになっている。
唐木とは、紫檀(したん)や黒檀(こくたん)など、古くから唐(中国)より輸入されてきた銘木。唐木製品の製作は江戸中期より本格化した。大阪唐木指物を基本に、寄木や象嵌(ぞうがん)を施した家具や小物は、何度も漆を塗って磨いた落ち着きのある光沢と木肌の美しさが自慢。
私達は、伝統文化を継承しながら、限りある資源を大切に扱うものづくりを心がけ、またユーザーが愛着を持って使い続けることができるものを提供することで、持続可能な社会の達成に貢献していきます。